母は耳が遠いので、着信音がよく聞こえるものが欲しい、とショップの店員に頼んで出してもらったのは、高齢者向けガラケー。
スマートフォンならカスタマイズできるから、ガラケーほど苦労はしないだろう、と思ったら、登録されている着信音はどれもこれも、ガラケー時代と大差ない高音の電子音で構成されたものばかり。
高齢が理由で耳が遠くなった人は、体温計がピピっと鳴った音が聞こえず、いつまでたっても脇に挟んでいることがある。
そもそも、高齢者は耳が遠くなったとはいえ、音が聞こえないわけではない。
若い人には不快な音として聞こえ、大人には聞こえないことを利用して、若者がたむろしやすいコンビニでモスキート音を流すという報道が一時話題になった。
この話題をみても、高齢者になると高音が聞き取りにくくなるということがわかる。
これだけ日本では高齢化が進んでいるというのに、利用者の多くが高齢化しているというのに、高齢者に聞こえる音源が開発されていないというのは、メーカー側の怠慢といえないだろうか。
■ どの電子音アラームも高音なわけ
昨今は研究の世界でも、定年退職した研究者が再雇用され、引き続き現役として働いているケースが増えている。こうした高齢研究者は、処理が終了したことを知らせる電子音が聞き取りづらくなっているという。
いえば、あの高音の電子音は、コピー機にもプリンターにも採用されている。これだけ多種多様な機械に似たような電子音が採用されているということは、何か理由があるのだろう。
日常の雑音でかき消されにくい音域のものを採用しているだの、小型で低電力でも大きな音を出せる装置だとあの音しか出しにくいだの、そうした理由があるのかもしれない。
■ smartよりもmore kindこそ使いやすい
あらゆる家電をインターネットを介して制御できるスマートスピーカーなどが最近注目されているが、高齢者にとっては、それらの設定を行うのはハードルが高いし、その子どもの若い世代が頼まれても、手間がかかる。
それよりは、各種家電が、高齢者にも聞き取りやすい音域でお知らせしてくれる音源を備えた方が、よほど消費者にとってありがたい商品になるのではないか。
■ 小型・低音な電子音装置に商機あり
高齢者にも聞こえる、もっと低音で音を大きく発することができる小型装置が開発されれば、スマートフォンだけでなく、体温計や電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機、コピー機、各種実験器具など、家電やオフィス用電化製品、実験機械など、さまざまな機械類に組み込まれることになるだろう。
高齢化は日本だけでなく世界中で進んでおり、中国は日本以上の高齢化が急速に進むことが確実だ。そんなとき、超小型・低電力で動く音源部品が開発されれば、あらゆる商品に導入されることになり、大きなビジネスチャンスになるのではないか。
電子音はどれも似通っているために、どの電子音が電子レンジなのか冷蔵庫なのか、洗濯機なのか、区別がつかないことがある。 機械がそれぞれ自己紹介するなど、識別が容易なさまざまな音源が開発されると、区別がしやすいだろう。
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