日本老年医学会などが高齢者の転倒に関し、声明を発表した。転倒は認知機能の低下や尿失禁と同じく「老年症候群」の一つであることを社会に認識してもらう狙い。
予防措置を講じても一定の確率で起きるため、家族や介護関係者は原因を確認することが大事だ。高齢者の転倒は、介護施設などでは過失による事故と受け止められることがあり、裁判になるケースもある。
これに対しステートメントは、科学的な証拠から、必ずしも過失ではなく、老年症候群の一つの症候であり、予防対策を講じても一定の頻度で起きることを明らかにした。内容は施設の運営者、入居者を意識して転倒対策の重要性をまとめている。
これを機に、通所施設を利用する高齢者やその家族、高齢者が訪れるJAの施設管理者やJAの助け合い組織の関係者も、転倒について改めて考えたい。こうした傷害は生活機能を低下させるばかりか、場合によっては死に至る。
2019年の人口動態調査から同学会は、不慮の事故による死亡の原因を年齢階層別に集計。30~44歳の比較的活動する世代では交通事故が32・6%を占め最も多かったが、高齢になるにつれ交通事故の比率は下がった。80歳以上では不慮の死の原因の27・9%を転倒が占めた。白内障で目が見えにくい、平衡感覚が鈍ってきた、足腰の痛みや低血糖なども原因になり得る。
自宅で転倒した場合、「けががなくてよかった」で終わらせず、どこに原因があったかを主治医と共に確認し、次の事故を起こさない対策につなげることが求められる。
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