架空投資話や悪徳商法などの消費者被害から高齢者を守ろうと、宮城県大崎市は県内の自治体に先駆け、消費生活センターとほかの部署や民間を連携させる被害抑止策を展開している。
被害者の個人情報を融通し合って表面化しにくい被害を掘り起こし、超高齢化社会の到来を前に市民一体で「悪徳業者」と対峙する姿勢を強める。
「不審な男が何度も出入りしているようだ」 2018年春、大崎市の90代女性の異変に市の福祉部門の職員が気付いた。職員は消費者被害を疑い、市の消費生活センターに連絡、地域の民生委員が女性に面談した。
福祉部門の職員が、介護施設入所に伴う金銭面の相談に応じる一環で女性の通帳を確認。過去に数百万円単位で現金が引き落とされていることを見つけ、センターの本格介入へとつなげた。センターと警察が連携して業者に連絡をとって以降、不審な男は姿を現さなくなった。
消費生活センターの佐々木真知子相談員は「消費者被害は被害回復が難しく、未然防止や早期発見が大事。市が消費者行政と他部署の連携を始めたのは08年にさかのぼる。個人情報保護法がネックになり被害者の具体的な情報は共有できずにいた。
改正消費者安全法が16年に施行され、消費者安全確保地域協議会(見守りネットワーク)を設置すれば本人の同意なしに個人情報を融通し合えるようになった。市は18年3月に協議会を立ち上げ、日本郵便や新聞販売店、警察などをメンバーに入れた。協議会の活用は全国的には認知が進んでいない。
高齢者は判断能力が衰える上、1人暮らし世帯も多く、悪徳業者から狙われやすい。国の推計によると、県の高齢化率は25年に31・2%、35年に35・0%に上る見通しだ。
消費者被害に詳しい仙台弁護士会の千葉晃平弁護士は「超高齢化社会で被害を最小限にするため、福祉や消費者部門などの縦割りをなくした質の高い見守りがますます必要になってくる」と話した。
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