総務省統計局が公表している「平成30年住宅・土地統計調査」によれば、高齢単身世帯のうちで借家の割合は全体の33.5%となっています。割合としては1990年代から大きな変化はないですが、高齢者の人数そのものは増えているため、賃貸物件に住む高齢者の数も増加傾向にあるといえます。
高齢者が賃貸物件に住むケースとしては、「交通利便性の高いエリアに引越した」 「子育てに区切りがついたので広い一戸建てを売って、コンパクトな部屋に引越した」というケースが挙げられます。単に高齢であるからといった理由で部屋の退去を求められたり、契約の更新を拒絶されても入居者は拒否することができます。
家賃を滞納していたり、ペットを飼うことができない物件でペットを飼っていたりするなどした場合には、高齢かかかわらず、退去を求められることになります。万が一立ち退きを求められたら…対処法を 貸主の都合などによって、立ち退きを要求されたり、契約更新を拒絶されたりした場合には落ち着いて対処することが重要です。
契約更新を拒まれても入居を続けたいときには、弁護士に相談をして交渉を進めてもらうようにしましょう。現在の住まいに特にこだわりがない場合は、立ち退き料の交渉を進めていくほうが現実的でもあります。
立ち退き料の相場としては家賃の6ヶ月分程度であり、立ち退きまでの猶予期間としても6ヶ月程度の猶予が設けられるのが一般的です。立ち退き料の支払いは貸主にとって義務ではないため、無理な交渉は避けたほうが無難だといえます。
これから賃貸物件を見つけるのは難しいケースも すでに賃貸物件に住んでいる場合は、貸主に正当な事由がない限り、そのまま住み続けられるケースが多いです。高齢者の場合でも、賃貸物件を借りるには部屋の内見をしたうえで申し込み、賃貸借契約を結んで入居するといった流れになります。
入居が断られてしまうケース 高齢者が単身で入居をする場合、部屋の中で体調を崩してそのまま亡くなってしまうケースが考えられます。貸主側からすれば、物件の資産価値の低下につながってしまうため、できるだけ避けたいと思ってしまうのも無理はありません。貸主としては「家賃を滞納してしまうのではないか」といった不安を抱いてしまう面もあります。
国土交通省住宅局が公表している『家賃債務保証の現状』では、貸主が入居制限を行う理由として「家賃の支払いに対する不安」が挙げられています。高齢者がスムーズに賃貸物件を借りるためには家族の支援や各種サービスの活用が欠かせないといえます。
高齢者で賃貸物件を見つける方法とコツ 高齢者の場合は賃貸物件を探すときには、家賃債務保証制度の利用やシニア相談可の物件を選ぶなどの工夫が必要です。家賃債務保証制度とは、国土交通省 家賃債務保証会社登録制度に登録された家賃債務保証会社が高齢等の入居者の家賃を大家さんに保証する制度で、入居者にとっては連帯保証人の役割を果たしてくれるものです。
この仕組みがあることで、高齢の入居者が家賃を滞納してしまったときでも、貸主は家賃の保証を受けられます。保証料は賃貸借契約期間によって異なりますが、2年保証の場合では月額家賃の35%です。
都市再生機構が提供している高齢者向け賃貸住宅であれば、高齢者であることを理由に断られる確率を下げられるでしょう。主なものとして以下の5種類があります。
- 高齢者向け優良賃貸住宅
- 高齢者等向け特別設備改善住宅
- 健康寿命サポート住宅
- シルバー住宅
- URシニア賃貸住宅
住宅設備やサービスなどは異なるところがありますが、いずれの住宅も高齢者に配慮した住まいとなっています。高齢者を対象とした賃貸物件の取扱いをしている不動産会社を見つけることで、住まいや契約に関するさまざまな悩みを相談できるはずです。
まとめ
- 高齢単身世帯のうち、借家の割合は比較的多い
- 高齢の入居者に介護が必要になったという理由だけで、契約解除となる可能性は低い
- 立ち退きを要求されたとしても、ある程度の猶予期間を設けられるので、きちんと準備を整えておくことが大事
- 入居者が家賃債務保証会社に保証料を支払うことで、家賃滞納時などに保証が受けられるサービスがある
- 高齢者向けの賃貸住宅から優先的に探していくことが大切
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