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「おふたりさま家庭」の相続対策…パートナーが認知症になったら?

岡野雄志税理士事務所の岡野雄志税理士が子どもがいない夫婦である「おふたりさま」の相続対策について、遺言書の作成後に認知症が発症した事例をもとに、ポイントを解説します。

Sさんご夫妻は、ご高齢になっても仲のいいご夫婦です。奥様には元夫との間にお子さんはいませんが、ご主人には前妻との間に息子がいます。現在は、どちらの家庭とも揉め事はありませんが、将来の相続発生に備えて、ご主人は退職を機に「自筆証書遺言」を作成しました。

Sさんのように中高年で再婚、子がいない、子が自立し別居……と、理由は様々ですが、日本の高齢者世帯における「おふたりさま家庭」は、年々増加しています。

内閣府『平成29年版高齢社会白書』によると、平成24年の認知症を発症した高齢者数は462万人で、65歳以上の高齢者の約7人に1人にあたります。内閣府『高齢者の健康に関する調査(平成29年)』の55歳以上の人へのアンケートでは、「介護を頼みたい人」の最も多い回答が男性は「配偶者」で56.9%、女性は「ヘルパーなど介護サービスの人」で39.5%。

被相続人が亡くなって相続が発生すると、遺言書を発見した相続人は速やかにその遺言書を家庭裁判所へ提出し、「検認」を請求しなければなりません。「検認」は遺言書の偽造・変造を防止する手続きであって、遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。

そのため、法務局以外に保管の自筆証書遺言を「検認」せず、遺言書に従って遺言を執行したり、家庭裁判所以外の場所で開封したりすると、5万円以下の過料に処される可能性があります。

万一、相続人の誰かがその遺言書に従うことを拒否した場合、家庭裁判所に調停の申立てを行います。調停で解決しない場合、相続人が地方裁判所に「遺言無効確認請求訴訟」を起こすことで、遺言書の有効性・無効性は争われます。被相続人が認知症の場合、その遺言書作成の時点で認知症を発症していたか、正常な判断能力があったか審理されます。

Sさんのご主人のケースでは、遺言書作成は認知症発症前でしたので、遺言書が法定通りに書かれていれば、医師の診断書と日付を照らし合わせて有効になる可能性が高いでしょう。
Sさんの奥様もすでにご高齢ですから、今後、ご主人の認知症が進まないうちに、早めに打つべき手立てはあります。

●認知症発症前もしくは前兆段階なら……(1)自筆証書遺言の原本は、自筆証書遺言保管制度を利用して法務局に預ける。※手続きができるのは遺言者本人のみ。

●認知症が進行し判断能力が低下したら……本人の判断能力が低下した場合にのみ限られる「法定後見人制度」を利用する。

高齢者の約5人に1人が認知症患者になるかもしれないという予測に伴い、生命保険会社が取り扱う「認知症保険」にも注目が集まっています。

民間の「認知症保険」は、保険会社によって基準や条件は異なりますが、一定の認知症状態と診断されたり、要支援・要介護と認定されたりすると、保険金や給付金が支給されます。保険会社の「認知症保険」には、一定期間を保障する定期タイプと、一生涯保障が続く終身タイプがあり、保障内容も様々です。なぜなら、相続税には死亡保険金の非課税枠があるからです。

被保険者と保険料負担者が財産を残して亡くなった被相続人で、保険金受取人が法定相続人の場合は、相続税の課税対象ですが、以下の範囲で非課税となります。また、奥様にはリゾート地の自宅・保険金・現金、そして、前妻のお子さんには預貯金や有価証券などを配分するよう遺言書と財産目録を作成していたようです。

相続の第1順位は直系卑属(子や孫など直系の親族で下の世代)ですので、Sさんの場合、前妻のお子さんとなります。第3順位は兄弟姉妹などですが、第1順位のお子さんがいるので、法定相続権はありません。

もし、Sさんのご主人が全財産あるいは過分な配分を現在の奥様に与えるよう遺言書に記していたら、これは問題でした。前妻のお子さんには、法律上、最低限保証された遺産取得分「遺留分」があり、お子さんが遺留分を主張すれば、法廷闘争にもなりかねないからです。
Sさんのご主人は認知症の兆しがあらわれるまえに、奥様を守るための最低限必要な準備をされていました。

今後はそのバトンを引き継ぎ、奥様がすべきこともありますが、我々も専門家としてできる限りサポートしようと考えております。

全文は出典元にて:https://news.yahoo.co.jp/articles/b947dd7bcc1856262a78503c7996bc4ed2270d7c

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