いつの時代もなくならない相続トラブル。事前の対策はバッチリと思っていても、いざ相続が発生すると揉めに揉めてしまうケースが後を絶ちません。
相続人たちの「(ほかの人間に比べて)自分は得するか」「損するか」という感情が大嵐を招きます。きょうだい間では、介護や教育資金の準備など、個人個人と親との関係性次第で、大問題に発展してしまうケースもあるのです。
特に介護を巡るきょうだい間の確執は極めて深刻な問題です。
“両親には1000万円の預貯金がありますが、それを使い果たしたら、自分たち子どもが分担して、父親の年金では足りない分を補うしかありません。そこで、姉と妹に相談したところ、妹である三女から思いがけない答えが返ってきました。
「私はお金は出せない」と言うのです。三女は子どもを連れて離婚しています。公的な資格を持った仕事に就いてフルタイムで働いている上に、結婚していたとき双方の親がかなりの額を援助して建てた家に住んでいることもあり、経済的にそれほど困窮しているとは思えません。
「私にばかり親を押し付けて、お金を出せないとは何ごと!」と、次女は怒りを隠せません。”
預貯金1000万円があるとはいえ、「老後2000万円問題」によって老後の現実があきらかになった今、「まったく介護に参画しない」というのは、相続発生後に大きな確執を残すことになるでしょう。
“介護施設の中でも、とくに安く入所できるといわれる特別養護老人ホーム(特養)の場合、利用料金は入所者本人の要介護度と所得によって決まります。 親が一般的な会社員で定年まで勤め上げ、平均的な額の厚生年金を受給している場合で、要介護3になり特別養護老人ホームへ入所したとすると、ユニット型個室利用で月額18万円程度の費用がかかります。厚生年金の平均受給額は14万円程度であるため、年金以外に年間約50万円程度の負担が必要です。”
残酷な現実ですが、介護のプロのなかには「結局、ゴネたもん勝ち」と断言する人も少なくありません。こじれにこじれ、はては大問題に…となるのを避けたい心優しい家族が折れるケースが相次いでいるのです。