「いつまでオレを待たせるんだ」オジサンがコンビニ店員に横柄な態度を取りがちな根本原因

プレジデントオンラインより

見知らぬ他人を頭ごなしに怒鳴りつける人は一体何を考えているのか。東洋大学の北村英哉教授は「職場での地位と個人の区別がつかず、『自分は尊重されるべきだ』と反発する中高年男性が多い。無意識のバイアス(偏見)が原因なので、こうした態度を改めることは非常に難しい」という――。

■「接客態度が悪い」と怒鳴る客の態度の悪さ

あなたは、コンビニエンスストアで「接客態度が悪い」と店員を怒鳴りつけている年配の男性を見かけたことはないでしょうか。

店員の方たちにとって、お客さんは誰でも平等にお客さんです。同じようにコーヒーやお弁当を買う限り、とりわけ誰にていねいに接客し、誰をぞんざいに扱うのかなどのルールはもちろんありません。

■年長の人を無条件に敬う社会から変わっている

2017年1月に配信されたニュースにおいても、『居丈高なシニア層についての店員の困惑や不快感』についての記事が取り上げられていました。その記事に寄せられた意見としては、「会社での役職が、 今の社会のありようは、「年長(高い地位)の人間は無条件に敬うべきだ」という価値観が薄くなっていっているところです。

■偉いのは「地位」であって個人の人柄ではない

人は地位と自分の区別がつかなくなってしまうことが多くあります。権力をもつ地位にあるから、その職権から発せられる業務命令に部下はしたがうのであって、かならずしもその人個人に心服しているわけではありません。

こうした力のことを心理学では「勢力」と呼び、ボーナスを減らす権限を振るうような勢力を「罰勢力」、評価を高くして、職階を引き上げる権限などを「報酬勢力」と呼びます。 いずれも職業上の地位にともなう権限によって成立しているだけであって、その地位にある個人の人柄がエラいわけではありません。それなのに、日本ではこの個人と職業上の権限を、区別せずに混ぜてしまう感覚が横行しがちなのです。

■本人が「ただの人」であると認識できるかが鍵

退職によって、職業上の地位がなくなってしまった方も、これまで自分が尊重されていた日常からすぐに離れられるわけではありません。しかし、会社以外の場所で「尊重」を求めても無理な話です。本人の心のうちでは、そのあたりがまだしっくりこないのです。

その人は職歴の最後に取締役や部長といった、会社では重要な人物として大切に扱われていたのかもしれません。それでも、退職すれば「ただの人」です。

「ただの人」であることに適応できない人は、若者がなぜ自分をもっと尊重しないのか、なかなか理解できません。

■「店員さんはあなたの部下ではない」と言ってあげる

退職後ということでなくても、ふだんから尊重される社内と、社外で利用する店のお客とでは立場が異なっています。店員さんは自分の部下ではないのですから、いつでも期待どおりの応対をしてくれるとは限らないでしょう。

今の日本は、どこにでもこのような「無意識のバイアス」によるパワハラの芽があり、時代の変化にマッチしない人びとが昔のままに抱える自己イメージのために、パワハラの加害者として認定されてしまうような社会なのです。

さきほどの例でいえば、家族が「店員さんは、あなたの部下じゃないですよ」と諭してあげれば、本人も立場の違いを自覚して、自身の振る舞いに気をつけるようになるかもしれません。

■無意識だからこそ繰り返される差別

世間では、女性蔑視をめぐって、不適切な発言や物言いがだいぶ意識されるようになってきました。 妊娠はひとりではできず、当事者はもうひとりいるはずです。 しかし、出産したら一義的に母親に育てる義務があるような世間の扱い方があり、それに比べて、もう一方の当事者である男性は免責されていることもあります。

家族のサポートが必要なのは当然ですし、乳児院や養父母を探す必要が生じることもあります。 どんな状況でも社会が安心して支援するということであれば、罪ではなく、もっと子どもが祝福を受けるかもしれません。

■相手に黙って配慮するより、まず話し合いを

こんな見方ひとつとっても、日本ではずいぶんとゆとりのないものの見方が横行しているようです。 近年、だいぶ理解が進みましたが、妊娠、出産の可能性のある女性社員が、いざ出産を迎えるにあたって育児休暇をとることに対し、どれだけの企業がサポートできているでしょうか。

夫である男性が育休をとることにも、まだためらいや、同僚の目を気にすることが現実に起こっています。 そこで、気兼ねなく、「安心して育休をとっていいよ」という上司からの気持ちの伝達があれば、あるいは、職場での宣言があれば、みんなずっと育休をとりやすいはずです。

育児休暇から復帰した女性社員に対して、子どもがまだ小さいのだから、きつくない仕事のほうがいいだろうと、上司が気を利かせたつもりで、責任の軽い仕事ばかりを与えたとします。 しかし、そうすることにより、女性社員がやりがいや充足感がもてないという不満を感じるケースがあります。

一方的な思い込み-アンコンシャスバイアス-は、よい結果に結びつかないかもしれない、ということをつねに意識しておくことが大事なのです。

出典元:https://president.jp/articles/-/50455

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