年収と健康には因果関係がある–近年、さまざまな研究によってそんな事実から明らかにされてきた。格差が広がる日本でも問題視され始めた「健康格差」が今、新型コロナの影響で深刻化している。今回は体調が悪くても働かないと生活できない高齢者の実態に追る。
「4年前から体調を崩し始めて、今は不整脈、ちくのう症、膝も壊していて歩くのもやっとの状態。 全身ボロボロですが貯金もないので仕事を辞めるわけにいかず、年齢的に転職も厳しいので限界まで今の職場で働くつもりです」 話すのは大西貞夫さん。
大西さんが暮らすアパート、6畳ほどの部屋には、服用している薬の袋やハウスダストアレルギー対策という空気清浄機7台と扇風機4台など、物が散乱していた。 一人が横になるのがやっとというほど拾ったもので溢れ返り、経済的、心身ともに余裕がない様子が窺える。
「月の収入は訪問介護のアルバイトの13万円と、早期受給している年金が2万円。 体調はひどかったのですがアルバイトなので仕事を休めば収入はゼロ、生活のために熱が出た日も働いていました」
公的支援にも頼るつもりはない 親族や知人のみならず、公的支援にも頼るつもりはないと続ける。「 頑張るしかないんですけどいつまで体が持つか……」 大西さんのようなその日暮らしの高齢者に希望はないのだろうか。
厚労省は、令和3年2月に「10年程度の音信不通」を目安に生活保護の親族照会しない方針を発表した。「扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について」