新型コロナウイルス感染症の法律上の分類が、季節性インフルエンザと同様の「5類」に引き下げられてから半月が過ぎた。これまで面会や外出などに厳しい制限があった高齢者施設でも、引き下げを機に緩和が相次ぎ、利用者と家族らがスキンシップを楽しんでいる。
高齢者65人が入所し、20人がショートステイサービスを利用する鹿児島市西別府町の特別養護老人ホーム「松恵園」。5類に引き下げられた8日以降は、家族らと直接面会できるようにした。
今年3月から面会はできたが、玄関ロビーのブース内でアクリル板越しだった。今月8日以降は、職員の目が届く範囲であれば、施設内の共用スペースや個人の居室で直接ふれ合える。事前予約制で、1日当たりの人数や時間に制限はあるものの、面会の申し込みが相次いでいるという。
運営する社会福祉法人「みらい」の中村奈美子理事長兼施設長は「涙を流しながら体をさすり、話し込む家族や利用者も多い」と話す。
松恵園はコロナ禍でも面会を認めていたが、昨年2月にクラスターが発生。これ以降、タブレットを使ったリモートや、ガラス戸・窓越しといった形での面会を余儀なくされた。職員で生活相談員の小原努さん(44)は「常に高い緊張感が必要で、職員と利用者双方にとって負担が大きかった」と振り返る。
5類引き下げ後の面会でも、来所者にはマスクの着用をお願いし、職員は手指消毒やマスク着用の徹底など警戒は続ける。それでも、中村さんは「直接ふれ合える面会に勝るものはない。今後も状況を見ながら、時間や人数など基準を緩和できるようにしたい」と話す。
県内の他の施設でも、引き下げを機に、人数や時間などに一定の制限をかけながら直接の対面を認める動きが広がっている。
高齢者施設内で感染者が発生した場合、これまで必要だった保健所への報告は、基本的に施設が連携する医療機関への報告となった。
これまで県が行ってきた入院調整も、原則として連携医療機関が行う。受け入れが困難だった場合や、多地域間での連携が必要だった場合に、保健所や県の広域医療調整チームが担う。
5類に引き下げられたが、高齢者は重症化するリスクが高いとされており、県高齢者生き生き推進課は「施設には引き続き、感染への警戒をお願いしたい」としている。
引用元:https://www.yomiuri.co.jp/local/kagoshima/news/20230524-OYTNT50108/