便秘がある高齢者は認知機能の低下が速い。認知機能スコアが2.7倍速く悪化

日経ビジネスより

慢性的な便秘がある高齢者は、そうでない人に比べて認知機能の低下が速いことが、東北大学の研究者らが行った研究によって明らかになりました。

慢性の便秘は健康な人にも見られますが、高齢者ではその割合が高くなります。近年、便秘の患者では、腸内細菌叢に変化が見られることが示され、腸内細菌叢が便秘の発症や持続に関係するのではないかと考えられるようになっています。

アルツハイマー病患者にも腸内細菌叢の組成の変化が観察されており、腸内細菌叢の変化は、炎症反応などを介して中枢神経にダメージを与えることが示唆されています。アルツハイマー病が進行すると、患者の水分摂取と身体活動が減少するために、便秘が悪化することも知られていました。

近年注目されている、腸の機能と脳の機能は互いに影響を及ぼしあうとする「脳腸相関」と呼ばれる状態が、アルツハイマー病の発症と進行に重要な役割を果たすと考えられてはいますが、どのようなメカニズムが背景にあるのかは明らかではありません。

今回は、既にアルツハイマー病または軽度認知障害と診断されている、便秘がある人たちと、便秘ではない人たちの間で、認知機能の低下速度に差があるかどうかを比較しました。2015年1月から2020年12月までの期間に、東北大学病院のもの忘れ外来を初めて受診した328人をスクリーニングしました。

アルツハイマー病またはMCIと診断された患者で、2021年12月までの期間に、頭部MRI検査と神経心理学的検査を6~46カ月間隔で2回受けており、分析に必要な情報がそろっていた84人(平均年齢77.4歳、男性が36人)を選びました。

認知機能の評価には、認知症スクリーニング検査のグローバルスタンダードであるMMSEの日本語版と、アルツハイマー病による認知機能障害を評価するADAS-Cogの日本語版を用いました。海馬の体積の縮小とDWMLの増大は、認知機能低下リスクの上昇を意味します。

対象となった84人のうち、8人が一人暮らしで、20人が介護サービスを利用していました。アルツハイマー病と診断された38人は、全員が認知症治療薬の処方を受けていました。便秘患者20人のうち13人には、下剤または整腸剤が処方されていました。便秘あり群となし群で、女性の割合、平均年齢、学歴には差はなく、両群に含まれていたアルツハイマー病患者の割合や、初回受診時に重症の認知機能低下が認められた患者の割合も同様でした。

初回受診時点で行われた血液検査の結果も両群間でほぼ同様でしたが、唯一の例外は、主に腸の粘膜細胞から分泌され、脳血管疾患と認知症に関係することが示唆されている、ホモシステインの値でした。便秘あり群が14.6nmol/mL、便秘なし群は11.5nmol/mLと、前者のほうが有意に高くなっていました。

MMSEのスコアについては、両群ともに2回目の測定の結果が初回から変化しておらず、経時的な低下傾向は見られませんでした。ADAS-Cogのスコアには経時的な上昇が認められ、上昇レベルは、便秘あり患者が1年あたり2.3544ポイント、便秘なし患者では0.8592ポイントでした。

この結果は、便秘あり群では、便秘なし群に比べ、認知機能の低下が2.7倍速いことを示唆します。

まず、海馬の体積の年間減少量には差は見られませんでした。年間変化量は、便秘あり群が24.48mL、便秘なし群は14.83mLで、便秘あり群ではDWMLの増大が1.65倍速く生じていました。得られた結果は、便秘が、認知機能の低下の加速と、DWMLの増大の加速に関係することを示しました。

この研究が対象とした人数は少なく、統計学的な検出力は高くなかったため、「より大規模な集団を追跡する研究を行って、今回得られた結果を確認する必要がある」と著者らは述べています。

引用元:https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00283/012600176/

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