外出できない入居者の思い出の地を撮影、高齢者施設で上映…福祉を学ぶ大阪の学生団体

コロナ禍で外出機会が減った高齢者施設の入居者のために、桃山学院大学(大阪府和泉市)の学生たちが思い出の場所を代わりに訪れ、撮影する取り組みを進めている。

初の上映会が9月に開かれ、本人や家族らが鑑賞。学生たちは今後も、年間3~4本の動画を作成していきたいとしている。

9月20日、大阪市住吉区の特別養護老人ホーム「ふれ愛の館しおん」。入居者の女性(91)は、約30年間働いた和歌山県白浜町のホテルの映像がスクリーンに登場すると感慨深そうに見入った。

その後、頭に装着した仮想現実(VR)ゴーグルで、青空が広がるホテル近くの千畳敷の光景を体感し「やー、懐かしい。きれいやわ」と声を上げた。

同席した大阪府富田林市に住む長男(68)によると、女性は同県出身。長男が中学生の頃にホテルで勤務し始め、客室の担当として朝から夜まで働いた。白浜には長く訪れておらず、見終わった女性は「私らの仕事は配膳とお部屋をきれいにすることだった。楽しくみんなと働いたことを思い出しました」と語った。

多くの高齢者施設では、感染防止のため外出や家族との面会を制限せざるを得ない状況が続く。「しおん」も、以前は地域の住民や同じ敷地内の乳児院の子どもたちと頻繁に交流していたが、難しくなっている。

福祉を学ぶ同大学社会学部の学生らで作る団体「FIOREI(フィオレイ)」が、同施設の現状を知り、「模擬的に外出できる機会を作りたい」と今回の取り組みを企画。6~7月に学生が施設を訪れ、抗原検査を受けた上で、入居者から話を聞き取った。

4年次村周真さん(21)は、4回にわたり女性にインタビュー。最初は会話が続くか自信がなかったものの次第に盛り上がり、「『ホテルで働いていた頃が楽しかった』と生き生きと語っていたのが印象に残った」と振り返る。

約10人の学生が8月上旬に現地の白浜へ。ホテルの運営主体は変わっていたが、事情を話すと施設内を撮ることを快諾してくれた。当時の面影を残すという大浴場に続く洞窟のような通路などに加え、臨場感を味わってもらおうと360度カメラも使って白浜の雄大な景色を撮影。字幕や音楽を付け、約10分ほどの動画にまとめた。

団体代表の4年長谷川大陽さん(23)は「大切な思い出をシェアさせてもらい、感謝している。福祉を学ぶ僕らも貴重な体験になった」と充実した表情。活動を見守ってきた社会学部の南友二郎准教授は「今の学生は、コロナ禍で対面授業や学外での活動が制限されてきた世代。こうしてボランティアに携われることは、彼らにとっても大きな活躍の舞台だ」と話していた。

引用元:https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20221006-OYO1T50016/

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