埼玉県戸田市と公平(こうだいら)病院(同市笹目南町、公平誠院長)が包括連携協定を結び、医療と移動手段を組み合わせたサービス「医療MaaS」の実証実験を開始した。公平病院が導入した医療機器搭載の診療車両で看護師が患者の自宅を訪問し、病院にいる医師とオンラインでつないで診察する。
自力で通院できない高齢者や経済的困窮などの理由で診察を受けられない人たちのため、新たな医療体制を構築するのが目的。車両には、通信機器のほか生体情報モニターや携帯型超音波診断装置など複数の医療機器を装備した。電源をバッテリーから確保できるハイブリッド車を採用したことで、災害時にも活用できるという。
実証実験は約3万3700人が住む美笹地区で実施し、病院側と行政側の地域包括支援センターなどが連携。市民の健康・福祉サービスを担う同センターのケアマネジャーらの情報を得て、車両が患者の元に出向く。市は病院のソーシャルワーカーとも情報を共有し、経済的困窮や孤立化などの問題にも対応する。
同市では65歳健康寿命が県平均より短く、65~74歳前期高齢者1人当たりの医療費は県内で一番高額というのが現状で、健康寿命を延ばすとともに医療負担の軽減が課題になっている。菅原文仁市長は「誰も取り残さない医療と福祉のため、連携協定で体制を強化する」と説明し、公平院長は「医療の側から積極的に動いて、患者と地域を結びつける社会的処方の仕組み作りを進めたい」と話している。
引用元:https://mainichi.jp/articles/20220822/k00/00m/010/033000c