高齢者の居場所づくりの一環で茨城県日立市が進める「元気カフェ」事業が、開始から5年目を迎えた。
誰でも気軽に立ち寄れる場所として軽食などを提供し、市内4カ所まで拡大。閉じこもりがちな高齢者の外出や交流を促す憩いの場として一役買う。市は今後、課題となっている空白地域の解消を目指す
久慈町の「元気カフェくじは」で8日に開かれた1万人達成記念セレモニー。節目の利用者となった宇佐美洋一さん(76)はカフェの魅力を語った。週2~3回通い、なじみのスタッフとあいさつを交わしたり、ボランティアで花壇に水やりを行ったりして過ごす。
運営を担うのは久慈町女性会(渡辺伊津子会長)。店内は芝生広場に面した開放的なつくりで、1人でも利用しやすいよう窓際にカウンターを置く。スタッフは50~60代の9人。
同会の渡辺会長(66)は「ここに来れば誰かがいて、会話や食事を通じて楽しい気持ちになれる」と笑顔で話す。元気カフェは市が18年から、「いつでも誰でも安心して集まれる」常設の交流場として順次整備を進めてきた。
市の高齢化率は33・7%(4月1日現在)で、全国や県を上回るスピードで高齢化が進む。さらに1人暮らしの高齢者世帯は約1万世帯に上り、県内では約1万4千世帯の水戸市に次いで多い。
カフェは市が委託して開設する「すけがわ」「あゆかわ」「くじは」のほか、民間設置の「べんてん」がある。コーヒーや軽食を安価で提供し、専門職による健康相談やタブレット講座などの催しも開く。コロナ禍で休止期間が生じた中、開所後の延べ利用者数は4カ所で約6万8千人に上る。
小川春樹市長は「免許返納者が増え、外出機会の減少が懸念される。人との交流で元気も生まれる、カフェがその手段であってほしい」と話す。18年2月に市役所脇にオープンした1カ所目の「すけがわ」は現在、1日平均約30人が来店する。口コミで評判が広がり、若者や子ども連れまで幅広い世代が集う。
月5回ほど開くイベントは体操や健康関連の講話のほか、歌や演奏、脳トレ、折り紙など独自の企画に工夫を凝らす。管理者の本間淳子さんは「笑顔と優しさを心がけている」といい、スタッフは来店者と和やかに交流を楽しむ。
こうした場所を徒歩圏に整備していこうと、市は新たに、地域住民らが運営する高齢者の居場所に年最大20万円を補助する「民設ミニ元気カフェ」事業を創設。本年度は塙山町の塙山交流センターで週1回のペースで始まった。
一方で、常設型の既存4店舗は市中央や南部に位置しており、北部地区にはまだない。
引用元:https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=16581427372333