独立リーグ・ルートインBCリーグの武蔵ヒートベアーズ(BC武蔵)が、「そよ風」のブランドで高齢者介護事業を展開するユニマット リタイアメント・コミュニティ(ユニマットRC)と協業し、日本初の「介護×スポーツ×農業」の取り組みを行っている。
目指すべき境地は地域支援を通じての社会貢献。初夏の日差しが降り注ぐ、埼玉県上尾市内にある民間市民農園。いい汗を流しながら大根の収穫に取り組んでいるのは、BC武蔵の武内風希選手、長尾光選手だ。
普段は「上尾ケアセンターそよ風」に通うシニア6名、そしてそのスタッフたちと、大切に大根を収穫していった。その数は実に100本。
「今まで生きてきて、農作業は初めてよ。とてもうれしいわ!」 感謝の言葉が続々と寄せられると、2人の選手は思わず照れ笑いを浮かべた。 ユニマットRCは全国に360拠点を有して、高齢者介護事業を展開している。
同社の未来ビジネス開発部の佐々木美佳さんによれば、同社では昨年から新たな介護サービス開発を目指す「イマドキシニア」プロジェクトを推進している。
佐々木さんは言う。 シニアの方々が体を動かすきっかけになれば、機能訓練にもなる。そうして体の虚弱(フレイル)が少しでも遅らせられれば、増大の一途をたどる日本の社会保障費も歯止めがかけられるかもしれない。
ユニマットRCはプロバスケBリーグの千葉ジェッツや女子サッカー「WEリーグ」のINAC神戸ともオフィシャルサプライヤー契約を結び、スポーツとの協業を進めていった。
野球において、BC武蔵とのコラボに踏み切ったきっかけは、何だったのか。BC武蔵の選手たちにとって、ユニマットRCとの連携は大きかった。NPBと比べて、必ずしも独立リーグの選手は食事面で恵まれているとは言えないが、BC武蔵は同社の管理栄養士が監修した栄養バランス食を摂ることで、効果的な体作りが可能になったのだ。
そして昨年11月、農園で選手と高齢者がともに野菜を育てるプロジェクトがスタート。 「介護×スポーツ×農業」の掛け合わせで、多様な世代が交流し、さらには心身の機能向上を目指すという画期的な試みが始まった。
選手たちが精魂込めて育てた小松菜、ほうれん草、コカブといった収穫物は、地域の人々やファンに対して販売され、親しまれる。 温かい、血の通った人間同士の営みが、そこにあった。
選手2名と6名の利用者が一緒に収穫を行ったのだが、この「6名」という要素が大きいのだと、佐々木さんは力説するのだ。佐々木さんはこう夢を語った。 今回の両者によるプロジェクトには、そのヒントが確かに存在している。