10秒間の片足立ちができない高齢者は、10年以内に死亡するリスクがほぼ2倍になる–。そんな研究結果が21日、英スポーツ医学誌に発表された。
この単純なバランス感覚テストは、中高年が普段の運動に取入れると役に立つかもしれないと研究者は指摘している。
体力や筋力、柔軟性は加齢に伴って低下するが、バランス感覚は50代まで保たれ、その後急速に衰える傾向がある。
これまでの研究では、片足立ちができないことと、転倒リスクの増大や認知能力の低下との関係が指摘されていた。
調査はブラジルの研究チームが同国で51歳~75歳の1702人を対象として2009年~20年にかけて実施。支えなしで片足立ちしてもらい、立っている足の後ろに浮いている方の足先を置いて、両腕は体側に保ち、まっすぐ前方を見るよう指示した。被験者の平均年齢は61歳で、男性が3分の2を占めていた。
およそ5人に1人は最初の診断時に10秒間の片足立ちができなかった。研究チームがその後7年間、被験者の観察を続けた結果、この間に7%に当たる123人が死亡した。
片足立ちができなかった人の死亡率は17.5%に上り、10秒間バランスを保つことができた人の4.5%を大きく上回った。片足立ちができなかった人は、何らかの原因で死亡するリスクが84%高いことが判明。
年齢や性別、BMI(体格指数)、高血圧や糖尿病などの基礎疾患にかかわる要因を考慮しても、その関係は変わらなかった。
今回の研究では死亡した人の死因は明らかにしておらず、バランス感覚の低下と寿命との関係を説明する理由として考えられる体の仕組みについても検討していない。
英グラスゴー大学の専門家はこの研究結果について、興味深いが決定的ではないと述べ、「10秒間立っていられないので心配だという人は、自分自身の健康リスクを振り返る必要がある」と助言。
片足立ちができなかった人は全般的に健康状態が悪く、肥満や心疾患、高血圧などの症状をもつ人の割合が高かったほか、2型糖尿病の人も多かった。
年齢が上がるにつれて片足立ちができない人は増え、51~55歳では5%にとどまっていたが、71~75歳では半数を超えた。
バランス感覚は専用のトレーニングによって大幅に改善すると研究者は指摘する。患者には医師が監修する運動プログラムに参加してもらっているが、バランス感覚の改善が寿命に与える影響について判断できるだけのデータはまだ収集できていないとした。