増加する1人暮らしの高齢者らの孤立を防ごうと、群馬県は若い世代との交流を促進し、社会参加につなげる役割を担う「まごマネージャー」の育成事業を始めた。本年度は10~30代の作業療法士ら9人を選考した。委託先のNPO法人による研修を受け、県内各地で高齢者宅への訪問や交流サロンへの参加といった活動に取り組んでもらう。高齢者と孫のように親しく接する中で若い世代との橋渡しを務め、孤独解消や活力向上などにつなげる。
県健康長寿社会づくり推進課によると、育成はNPO法人ソンリッサ(前橋市)に委託して進める。同法人は同市内を中心に、社会福祉士や作業療法士らを「まごマネージャー」として派遣する高齢者見守りサービスを展開しており、この活動を県内に広げて若い世代と高齢者が交流しやすい地域をつくる。
7~8月に18~39歳を対象に希望者を募集し、作業療法士や看護師、大学生ら9人を選考した。研修は来年2月まで9回行う。同法人が運営する高齢者交流サロンでの実習も予定している。同法人は3年間の事業展開を提案しており、県は本年度の実績などを踏まえ、来年度以降の実施について検討する。
県庁で今月、初回の研修が開かれ、県の担当者が事業内容を説明した。同法人の萩原涼平代表理事は「地域福祉に関心を持った若い方を多く育成し、県全域に広げたい。(高齢者福祉への)自分の問題意識を深掘りして、行動につなげられるようにしたい」と述べた。
伊勢崎市から参加した看護師の女性(27)は「仕事でも独居の高齢者が増えているのを実感し、つながりが必要と考えていた。(研修で)地域づくりの視点を学べた」と話した。
県によると、2019年6月現在、県内の70歳以上の高齢者のうち1人暮らしは約5万7千人で13.4%を占めている。5月に孤独・孤立対策推進法が成立し、国も高齢者に限らず孤独や孤立の解消に向けた対策を進めている。
県の担当者は「世代が離れているからこそ話しやすい場合もある。核家族化が進んで孫世代と関わる機会が減っていることから、本当の孫のように接することで、自然に交流が生まれる地域をつくりたい」と事業の狙いを説明している。