静岡新聞より
高齢者が同世代にスマートフォンの使い方を指南-。袋井・森地域シルバー人材センターは本年度、行政や企業と連携し、60歳以上を対象としたスマホ講師の育成事業に乗り出した。同様の試みは全国的にも珍しいという。高齢化社会が進む中でシニア世代の活躍の場を広げ、デジタルディバイド(情報格差)の解消を図る。
昨年11月初旬に袋井市のメロープラザで開かれた講習会。同市在住の60~80代が参加した。講師を務めるのはシルバー会員。電源の入れ方など基本動作からインターネットやメールの使用方法まで、分かりやすく説明した。この日が“講師デビュー”だった藤沢三男さん(66)は「戦々恐々だったが、無事終えられて良かった。一緒に学ぶという心構えで臨んだ」と振り返った。
同センターは昨年9月、同市と森町、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズとデジタル活用の推進に向けたパートナーシップ協定を締結した。シニア世代のスマホ講師の育成をはじめ、スマート社会に適応したまちづくりの実現に協力する方針を確認した。
世代間の情報格差が広がり、政府は「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」を掲げ、自治体などに施策の実施を求めている。連携協定はその一環。本年度の同市の調査では、市内の70歳以上の約4割がスマホを持っていないという。同世代が指導することで高齢者がスマホに触れる機会を創出し、デジタルサービスの利用などにつなげる。
現在12人が研修を経て講師として活動する。受講希望者からの問い合わせが殺到し、今後も定期的に研修会を開いて指導環境を整える。将来的には先進事例として全国に発信し、スマート社会の実現に貢献する未来図を思い描く。永田進理事長は「この機を捉えてスマホの使い方を広め、デジタル化の流れに高齢者が取り残されないようにしたい」と話した。