東洋経済オンラインより
親の介護手続きや最期の対応まで代行する業者の売上が伸びている。背景にあるのは親の面倒はみたくないという人の増加だ。
2012年に新語・流行語大賞トップテンに選出された「終活」。人生の終わりを見据えて自らの介護や葬儀の準備をする活動が高齢者の心に響き、週刊誌でも頻繁に特集が組まれた。
「高齢者の終活のために始めた事業だったのに、今では子どもからの相談のほうが多い。親の面倒を見たくない、介護をしたくないという相談が増えています」そう話すのは、高齢者の家族代行サービスを行う一般社団法人「LMN」代表の遠藤英樹氏だ。
同法人は高齢者本人からの終活や生活支援の依頼を見込んで設立されたが、今では相談の9割が娘からだという。遠方に離れて暮らす親の支援を依頼する子どもが多いと思いきや、そうではない。親のすぐ近くに住んでいるのに「親の面倒を見られない」という依頼が約6割に上る。
「相談者の多くは、親の世話が『できない』というよりは、精神的に『したくない』という人。厳しいしつけや育児放棄をされた、逆に干渉されすぎたという人も多い。そうした理由から親と距離を置いているのです」
相談者は40代、その親は70代というケースが最も多い。一人っ子の単身男性が目立つ。そうした家族に代わり、役所や病院の手続き、介護施設とのやり取りを行うほか、身元引受人として緊急時の連絡も受ける。
親が亡くなったときには、葬儀から納骨の手配、自宅の片付けまで行う。これまで火葬場にも家族が来なかったということが、3回ある。火葬をしてお骨を拾うのはスタッフだ。
身元引き受けも含めると、初期の登録料は44万円。メール以外の代行業務は時間ごとに料金が発生する。相談は1日30件ほどあり、この2年で売り上げは倍増した。
こう日常生活のサポート業務に需要があるのは、ほかの制度では担えない“隙間”の支援だからだ。判断力の低下した人が受ける成年後見は財産管理が中心で、生活のサポートまでは行わない。
行政の福祉サービスも、家族が申請や手続きを行わない限りは利用できない。「家族や親族がいる限りは家族に任せる」が原則だ。こうした子どもへのサポートのほうが高齢者本人からの依頼より労を要するという。
子どもが親の面倒を見るのは当たり前、という時代は変わりつつある。