9月1日は「防災の日」。大災害が起こると、体の弱った高齢者は逃げ遅れやすく、避難後にも体調を悪化させやすい。
NPO法人「災害看護支援機構」の副理事長で、災害時の高齢者支援に詳しい甲南女子大看護リハビリテーション学部の松岡千代教授に、日ごろからできる備えについて聞いた。
「高齢者の場合、まず気を付けたいのは薬」と松岡教授は語る。循環器の病や糖尿病などの慢性疾患の人が多く、常に薬を服用している割合が高いからだ。特に、避難所では、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まる。
避難所などは段差などもあってトイレに行きづらく、行く回数を減らそうと水分摂取を控えがちになる。血液をさらさらにする薬などを普段飲んでいる人は、飲まなくなるとそのリスクがさらに高まる。
最近は、被災地に医療関係の支援が入るのが早くなった。薬を使い果たしたときには、お薬手帳があれば、支援者から追加の薬を得られる。薬の種類をメモし、非常用持ち出し袋に入れておけば、手帳を持ち出し忘れた際に役立つ。
持ち出し袋に入れっ放しにはできないものの、忘れずに持って行きたいのが、眼鏡、補聴器、義歯など一般的な支援物資で対応できないものだ。新型コロナウイルスの感染対策用にマスクの予備も忘れずに。
避難所までたどり着ければ、飲料水や非常食は、すべてを個人で持ち込まなくても何とかなるという。持ち出し袋が重過ぎて、運び出せないことがないよう、あらかじめ持って、本当に必要な物を選別することも大切だ。
体が不自由で単独での避難が難しい人の場合は、あらかじめ隣近所の人に「手助けをお願いしたい」と伝え、避難の手順も確認しておきたい。自治体は、高齢者など避難にサポートが必要な「避難行動要支援者」が、どこに誰と、どうやって避難するのかをまとめた「個別避難計画」を作ることになっている。
支援者の不足などで計画作りはなかなか進んでいないが、計画がなくて不安なら自治体などに相談するといい。高齢者は体調が悪化しやすいが、「災害後は興奮状態にあるので、本人も体調不良に気づきにくい」。
周囲の人は、高齢者に体調の変化がないか声掛けし、高齢者本人は、ささいな変化でも早めに伝えることが大切という。
体調の悪化は、環境の変化によるものだけでなく、新型コロナの可能性もある。「早めの相談が、自身や周りの人を守ることになる」と松岡教授は呼びかける。