涙が止まらなかった。キャメロン・スミス(オーストラリア)の優勝が決まった18番脇から話す青木功の声はかすれ、「全英オープン」への愛にあふれた言葉がテレビに流れた。
大会を放送するテレビ朝日のラウンド解説を長らく務めてきた青木は、来月31日で80歳の誕生日を迎える。そして、ともに全英オープンを伝えてきたゴルフキャスターの戸張捷氏とともに、今大会限りで“引退”する。
青木自身、1977年に大会初出場を果たすと、翌78年には聖地に降り立った。そこで7位タイに入ると、同じくセント・アンドリュース開催となった90年までに合計9回の出場。「懐かしいね~、あれから40年以上経っているんだな」と練習日から感慨深げな様子を見せていた。
トップ7に3回入り、こよなく愛した全英の舞台。シニア入りを機に今度は解説として全英に触れてきた。初めての出会いから45年。ついに、勇退する時がきた。
最終日は最終組について、熱戦を伝えた。横には戸張氏。日本ゴルフ界の礎を築き、支えてきた二人が18番の光景を目にしたとき、どんな思い出がよみがえったのだろうか。戸張氏が「こうやって仲良くやらせてもらってよかったね」とねぎらいと感謝を伝えると、涙声で「ありがとね」と応えた青木の言葉が画面から響いた。
「この雰囲気をずっと青木さんと二人でね。楽しんでから帰りましょうね」とプレーが終わった18番を見ながら戸張氏が優しく声をかけると、「そうだね、最後の最後までいよう」と声を絞り出した青木。2度目の全英からの引退。「やっぱりもう若い時代だな」。次世代へとつながる第150回目の大会は、日本のファンにとっても感動的なフィナーレで幕を閉じた。