富士通は6日、体の位置を捉えた点のデータを大量に分析して、人の姿勢を高精度に推定できる新しい技術を開発したと発表した。容姿など個人の特定につながりやすい情報を分析対象としないため、病院や介護施設でプライバシーに配慮しながら患者や高齢者の転倒などを検知できる。2023年度中にサービスとして提供することを目指す。
電波で周囲にあるものを検知する「ミリ波センサー」を1分間に数十回照射してデータを収集する。従来の1回の照射では粗い点データしか収集できず、姿勢を誤って認識することが多かった。新技術では前後数回分の照射によるデータを合わせることで詳細な分析を可能にした。高齢者は短時間に大きく姿勢を変えることは少なく、数回の照射で集めたデータを同じ姿勢の分析に利用できると判断した。
約140人の行動を学習した人工知能(AI)で点データを分析して姿勢を推定する。人間の基本動作のデータを組み合わせて複雑な行動を分析できる富士通の既存技術を使い、「立ち上がる際に転倒する」などのトラブルを明らかにする。
今後はサービス化に向け病院や介護施設との実証実験を実施する。同社の増本大器フェローは「センサーを置くことについて社会の理解を形成しなければならない」と課題を語る。
医療や介護の現場では人手不足や業務負荷の軽減のためにIT(情報技術)の活用を求める声は多い。センサーで高精度に転倒を検知できるようになれば、見守りにかかる負担軽減が期待できる。利用者が受け入れやすいサービスのあり方を探り、事業につなげる。
引用元:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC064000W2A700C2000000/