日刊ゲンダイより
「偉そうなことを言うつもりはないんですが、高齢者は若い人の手本にならなきゃいけませんよ。自戒の意味をこめて、最近そう感じることが多いですね」表情こそソフトだが、心なしか強い口調でヨネスケさんは語りはじめた。
「この前も地下鉄のホームで電車を待っていたんですがね。並んでいる人が目に入らないのか、我先にと横から入ってくるジイさんがいたんですよ。『並んでますよ』と私なりに穏やかな口調で注意したんです。さすがに強行突破はしなかったけれど、“えっ?”という顔をしてウンともスンとも言わない。高齢者にかぎったことじゃないかもしれないけれど、あれはいただけませんねえ」
なにも偉そうなことを言うつもりはないけれど、と断りながら言葉を選ぶようにしてつづける。
「“ごめんなさい”をちゃんと言えるようじゃないと……。“”もね。減るもんじゃないんだから。想像ですが、ああいう人はある日突然そうなったわけじゃないと思うんですよ。ガキの頃から、威張ったり、無礼をはたらいたりしてきたんだと思いますよ」
「駅のエスカレーターに乗っていたときのことなんですが、私は右側に立っていたんです。すると下のほうからズカズカと上ってくるジイさんがいる。立ち止まって舌打ちしながら、なんか言ってきた。左側に移動しろということなんでしょう。ケンカをするつもりはなかったけれど、道は譲らなかった。『歩いちゃいけないって、ちゃんと書いてありますよ』って。意地悪したわけじゃないんですがね(笑)」
74歳の高齢世代の「お行儀の悪さ」が気になるようだ。
「年を取ってから上機嫌で暮らそうと思ったら、上から目線ばかりでいるのはよくありませんよ。落語の世界でもそうですが、師匠と弟子、会社なら上司と部下といった関係ではもちろん必要なことかもしれませんが、それはそれ。いつでもどこでも、嫌われたり、怖がられたりするような生き方は損ですよ」
「師匠(桂米丸)は、稽古はもちろんいつも弟子には厳しかったけれど、まわりには本当に優しかった。師匠と弟子の関係ですし、修業ですから、それは当たり前のことなんです。もちろん落語に関しては、私も弟子には厳しく接しますが、それ以外のことでは教わることが本当に多い。これもユーチューブで若手の落語家を紹介したり、早い時間に楽屋で撮影したりしはじめたことがきっかけですね。それまでは、親しく会話をしたり、冗談を言い合ったりすることはあんまりなかったと思いますよ。師匠だとか、年配だからと威張り散らしたり、横柄だったりしたら、若い人は誰も寄ってこない……。もっとも、もし、私が高いところまで行った噺家なら、若い人から怖がられるようなジジイになっていたかもしれませんが(笑)」
慕っていた歌丸さんはいまから4年半前に亡くなったが、歌丸夫人とは折に触れて会ったり、連絡を取り合ったりしているという。スマホで撮った夫人とのツーショット写真を見せてくれたが、ヨネスケさんにとって、歌丸さんはまさに「手本」だったようだ。