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【東京都渋谷区】101歳も学ぶ高齢者スマホ講座 無料貸し出しで情報届ける

101歳の女性が向き合っているのは渋谷区が無料で貸し出したスマートフォン。使い方はスタッフが丁寧に教えてくれます。「90歳の人でも使っているから、私もできたらいいな」と関心は高いようです。

区がここまでするきっかけの一つが2年前の台風19号。避難所を開設し、ホームページやSNSで呼びかけましたが、避難してきた高齢者はほとんどいませんでした。なんとかして命を守る情報を届けたい。渋谷区はスマートフォンの講習会をはじめました。

取材のために区役所を訪ねると、ストックを手にしゃきしゃきと歩いてやってきた参加者に出会いました。渋谷区在住の村田千恵子さん、なんと101歳です。家族や友人と、もっと簡単に連絡ができるようになりたいと講座に申し込みました。これまではガラケーもなく、固定電話とパソコンのメールでやりとりをしてきたそうですが、指導役のスタッフと一緒にLINEやメールの練習を重ねています。

村田千恵子さんは「ふつうの電話よりずっといい。今どき、なかなか人に会うことができないから。健康でいるのをお互いに確かめ合えたら、ありがたいと思いますね。90歳の人でも使っているから、私もできたらいいなと思って。だからしっかりと覚えなければ」と話します。

この日は、顔を見ながら電話ができる「ビデオ通話」の使い方を教わっていましたが、スマホを触っているうちに、間違えて電話をかけてしまいました。相手は、同居している息子。

仕方ないのでそのまま実践練習に突入!67歳の息子とのビデオ通話は無事に成功しました。声を聞くために、思わず画面を耳元に持っていってしまって顔が見えなくなる場面もありましたが、使えるスマホの機能が増えたとうれしそうでした。

千恵子さんが使っているスマートフォンは、渋谷区が無料で貸し出しているものです。ここ数年、渋谷区ではインターネットやSNSを活用することで、区役所まで足を運ばなくても手続きができる“非来庁型”のサービスを推進してきました。

しかし、高齢者の多くがそれを十分に活用できていないことが課題でした。その理由は昨年度の調査で明らかになりました。区内に住む65歳以上の高齢者4万3000人のうち、4人に1人がスマートフォンを持っていないと分かったのです。

この状況を区が深刻に捉えるようになったきっかけがありました。それは、2019年の台風19号です。区内でも、一部道路の冠水や倒木があり、警戒レベル4「避難勧告」が発令されました。区では12の避難所を開設し、その情報をホームページやSNSを使って発信しましたが、避難してきた人の中に高齢者がほとんどいなかったのです。

高齢者の安心・安全を確保するためにも、オンライン申請やキャッシュレス決済などのデジタルサービスの利用を推進していく必要があると区は考えたのです。そこで、今年4月に、高齢者の“デジタルデバイド”、いわゆる“情報格差”を解消する事業をスタートさせました。

区は対策を検討した結果、スマホを持っていない人に2年間無料で貸し出し、講習会を重ねて利用方法をしっかり学んでもらう体制を整えました。区民に配布している広報誌や地域の掲示板など、ネット環境がない人にも伝わるよう参加者を募集したところ…。

集まったのは、約1750人。半数以上が80歳以上でした。今年9月、多くの「高齢者スマホユーザー」が誕生したのです。

80歳を過ぎてからのスマホデビューは簡単ではありません。さまざまなハードルが明らかになってきました。
(1) スタッフの説明が聞き取りづらい
(2) 押す場所を見つけるのに時間がかかる
(3) タッチしても反応しづらく、スクロールはもっと難しい
(4) 「ホームボタン」「戻るボタン」など基本動作に慣れるのが大変
(5) スマホ用語は初めて聞く言葉ばかり

担当者も、一人ひとりに合った工夫を求められていました。使いこなせるようになるまでには、自宅での反復練習が欠かせません。皆さん自分なりのメモを残していました。少しでも長く学びたいと、開始時間の1時間前に来る人も少なくありません。

切実な理由でスマホが使いたい人、新たな世界を楽しもうとする人、それぞれがそれぞれの理由でスマホと向き合っていました。

渋谷区は、高齢者がスマートフォンを日常的に活用できるようになれば、デジタルサービスの恩恵を享受できるようになり、生活の質も向上すると期待しています。

引用元:https://www.nhk.or.jp/shutoken/wr/20211214a.html