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「元・北千住のナンパ王」も利用 カジノ楽しめるデイサービス

デイサービスに、子ども扱いされるイメージを抱くシニアは少なくない。男性は抵抗を感じやすく、一般的に利用者の7割ほどは女性だ。

扉を開けると、レディー・ガガのアップテンポなナンバー「Born This Way」が流れる中、シニアたちが体操に励んでいた。 全国に23店舗を展開するデイサービス「ラスベガス」は“カジノ”を楽しめることで男性からの人気が高く、チェーン全体で約1200人いる利用者のうち7割が男性だ。

ブラックジャックテーブルを囲む4人の男性は、真剣な面持ちでカードを見つめていた。白シャツに黒ベスト姿のディーラーが「お、ここで賭ける! 勝ったらでかいですよ」と場を盛り上げる。

男性たちは「一気に入ったよ」とにんまりしたり、「はーだめだ」と頭を抱えたりと一喜一憂していた。体操に参加すると1万ベガスがもらえ、それを元手にカジノを楽しめる。

ラスベガスを運営する日本シニアライフ株式会社は、00年からデイサービス事業を始めた。

当初は“従来型”のサービスを提供していたが、社長の森薫さんは現場で課題を感じていた。 「男性は自尊心が高い傾向があり、童謡を歌ったり塗り絵をしたりというプログラムは受け入れづらい。次第に足が遠のいて体が衰え、要介護度が上がる人もいました」 そんな中、米国を訪れた際にラスベガスのカジノで見た光景に衝撃を受けた。

「これだ!」と思った森社長はシンガポールやマカオなど各国のカジノを視察し、約2年後にラスベガスを立ち上げた。

店に入ったときにワクワクするよう、赤のカーペットを敷いたりシャンデリア風の照明を下げたりと内装にもこだわる。利用者の一人で、自称「元・北千住のナンパ王」のOさんは、初めて訪れたときの驚きを振り返る。

「デイサービスなんてじいさんとばあさんばっかりの老人ホームみたいなところだと思ってたけど、ここは楽しいところだなって」

森社長にとって印象深い老夫婦の姿がある。妻に連れられて見学に来た男性が「明日から行く」と口にした途端、妻が号泣したのだ。介護で疲労困憊した妻は夫にさまざまな施設を勧めたが、拒まれ続けていたという。

ラスベガスに通い始めて、要介護度が改善した人は少なくない。「歩けるようになったり、会話が増えて顔つきも変わったり。心が元気になれば体も元気になるケースは多い。『ここがなきゃ、家から一歩も出なくなって死んでた』と話すかたもいました」

時には、「ギャンブル依存症になるのでは?」「税金である介護保険料を遊びに使うのか」などと批判的な声も寄せられる。

「これまでの利用者約5千人のうち、依存症になった人はゼロ。際限なく遊べる環境ではないので依存できません。手段は遊びですが、活力や健康を取り戻すという結果を出している。それが一番大事だと思います」

東京都杉並区にある「松渓ふれあいの家」も、利用者の7割を男性が占めるデイサービスだ。定年後、居場所を求めていた男性5人が、「自分たちが行きたくなる理想の場所をつくろう」と立ち上げた。

一日の利用者は15人ほどで、おのおのが麻雀や囲碁、将棋などに興じる、穏やかなサロンのような雰囲気だ。70~80代のシニアボランティアも輪に加わるが、本人の達成感を奪わないよう、フォローは最小限にしている。

日本の介護業界に昔から根づく「お世話をしてあげる」というメンタリティーは、利用者の子ども扱いの原因の一つだと指摘される。ふれあいの家では、敬語で話したり、トイレは個室の外で見守ったりと、自尊心に配慮した対応がとられている。

毎月“5”がつく日の昼食時、小さなコップ1杯のワインもしくはジュースが出る。カレンダーを見て、「俺が来る曜日はワインの日が少ない」と文句を言う人がいるほど、大人気のイベントだ。

施設長の松本典子さんは、最終日に寂しそうな顔をする利用者を見るたび、「家族に面倒をみてもらっている以上、移りたくないとは言いづらいのだろう」と感じるという。「生きてるっていいねって思ってもらうこと。それがみなさんの健康のためのここのやり方です」

一般社団法人日本デイサービス協会の森剛士理事長によると、豪華な食事や旅行、マッサージなど魅力的なサービスを打ち出して差別化を図る施設は増えているという。

引用元:https://dot.asahi.com/wa/2021110500028.html

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