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秋田・東成瀬村で異形の農福連携 高齢者施設の挑戦

人生の晩秋を迎えたお年寄りたちがどうすれば生き生きと過ごせるのだろうか。全国で最も高齢化が進む秋田県の高齢者福祉施設が異形の「農福連携」に取り組んでいる。

岩手県や宮城県に隣接する東成瀬村の高齢者福祉施設「風鈴」。そのそばの5アールほどの水田で9月22日午前9時すぎから稲刈りが始まった。

鎌で刈り取った稲をわらで束ねる方法を、阿部さんが農家だった谷藤さんに教わっていた。 かくしゃくとした谷藤さんのように介助がいらない人は少ない。あぜ道と田んぼの間には段差がある。スタッフは移動するお年寄りの体を支えたり座ったまま作業できるよう長椅子を準備したり、安全面に細心の注意を払う。

代表の佐藤一人さんが脱サラし、風鈴を設立したのは2008年7月。トマトやナスなど夏野菜の栽培を手始めに、農作業を活動に取り入れたのは14年からだった。

村の農業委員になり、担い手がいないために荒廃する農地の状況を知った。コメを作り始めて5年目になる。佐藤さんは田んぼや休耕田が広がる周囲を眺め、振り返る。

農福連携は農業を通じ障害者の健康や社会参画を目指すケースが多い。佐藤さんは高齢者施設の暮らしに身近な農業を生かせないかと発想した。お年寄りたちは無口で、隣同士で話す光景はまれだ。

だがデーサービスに通うお年寄りは「介助を必要とする何らかの課題を抱えている」 雨が降らなければ、少しでも田畑に出てできる作業をしようと佐藤さんは呼びかける。

それでも「冬場は翌春以降の農作業の準備期間として、それぞれ体力が落ちないよう体を動かす動機づけになる」と佐藤さん。

高橋恵美さんは「朝から着替えて長靴を履き、鎌を準備してくるようになった人もいる」と話す。農地という地域の資源を生かす風鈴の試みは、お年寄りたちのこうした素朴な問いかけに答えたいという思いから始まった。

コメの収穫量は300キログラム。佐藤さんは今年初めて、小口で事業資金を募るクラウドファンディングに挑んだ。湯沢市ビジネス支援センターの協力を得て、「冥土の土産」というユーモラスな返礼品に充てる。

風鈴では稲をくいに掛け、約3週間、日光で乾燥させる。この「天日干し」は機械乾燥に比べ手間がかかる半面、コメのうまみが増す。風鈴の試みは地域の農地保全にもつながる。 佐藤さんがCFに挑戦したのも、こうした取り組みを多くの人に知ってもらいたかったからだ。

出典:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC180QR0Y1A910C2000000/

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